2020年9月13日・27日 クレオ大阪西 離婚セミナー 質問票の回答


9月13日分

2020年9月18日 更新

<離婚自体に関すること>
Q 夫が浮気をしていますが,今は子供の教育費等を考えて,10年後くらいに離婚したいと思っています。過去の不貞で離婚することはできますか?
⇒民法上,離婚ができる場合は以下のとおり定められています。
第770条第1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
第2項 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
→一回の不貞や過去の不貞があった場合には,確かに770条1項1号にあたるのですが,第2項で,婚姻の継続を相当と認める時は離婚の請求を棄却できるとされています。10年前の不貞が原因であれば,その不貞の具体的な内容(期間等)やその後の夫婦関係に修繕がみられたかなどが考慮されることになるので,必ず離婚が認められるというものではないと考えられます。

Q 夫がADHDやアスペルガーだった場合には不利になりますか?
⇒妻に不利ということはないと思うのですが,当事者間で離婚協議ができず,条件がまとまらないことが多いかもしれません。

<別居に関すること>
Q 夫が出て行ったのですが,夫は住民票の住所をそのままにしているので同居していることになっています。分けるべきでしょうか?住民票の住所が同じなら別居しているといえないということはないでしょうか?
⇒夫の住所を勝手に変更することはできないので,世帯を分ける方法になるかと思いますが,それが必要かどうかによります。世帯分離の必要があれば分けることになると思いますが,住民票上の住所が同じであっても別居しているという事実が変わるわけではないので,世帯を分ける必要がないのであればそのままでもいいと思います。本来であれば,住所を変わった夫が住民票も変更すべきなのですが,それは妻からは強制できないので,妻としてはそのままにしておくしかないと思います。

<調停に関すること>
Q 離婚調停を申し立てる場合,夫にその旨を事前に伝えるべきですか?伝えないほうがいいでしょうか?メリットデメリットはありますか?
⇒事前に伝えることによって,調停に出てきてもらうというメリットはあるかもしれないですが,特に伝えなくても問題はなく,事前に伝える必要性があまりないように思います。調停を申し立てると事前に言うことで,調停前に当事者間で揉めるのあれば,言わない方がいいと思います。

<婚姻費用・養育費に関すること>
Q 婚姻費用と養育費の算定額は違うのですか?
⇒はい,違います。婚姻費用は配偶者の生活費分も含まれますが,養育費には配偶者の分は含まれないので金額が低いです。

Q 年収に変動があった場合,どの年収を基準にすべきでしょうか?
⇒婚姻費用や養育費は,現在の収入を基準に判断されます。ただし,近い将来確実に変わることがわかっている場合はその収入を基準とされることもあります。例えば,育休取得中で職場復帰が確実な場合など。

Q 養育費には進学に関する費用は含まれないのですか?
⇒進学等に関する費用も含めて養育費なので,養育費とは別に当然に請求できるものではありません。

Q 進学に関する費用をその都度請求することはできますか?
⇒相手方に任意に支払ってもらうことは可能です。協議や調停でも,「別途協議する」などの文言を入れることはあります。

Q 進学に関する費用をその都度請求するのは嫌なので,前もって請求することは可能ですか?養育費に含めて請求しておくことは可能でしょうか?
⇒相手方と協議ができればいいのですが,そうでない場合には,進学するかどうかや具体的に進学先等決まっていない状況では難しいと思われます。

Q 夫が算定表に基づく金額しか払わないと言っていますが,それ以上もらわないと生活できません。どうしたらいいでしょうか?これまで月にどれくらいかかっていたかを夫に
提示すべきでしょうか?
⇒算定表はあくまでも一般的な金額なので,事情によって変わる場合もあります。夫が払わないと言っているので,提示しても払ってもらえない可能性は高いと思いますが,どのくらい生活費としてかかっていたのかを計算して,調停で出すことは必要だと考えます。

Q 夫はアルバイトをしているようで,収入がわかりません。養育費の算定はどうなりますか?
⇒養育費(婚姻費用))の算定は,夫の全部の収入をもとに計算されるので,アルバイトも当然入ります。同居中なのであれば,課税証明書を取ってみてはどうでしょうか。アルバイト先がきちんとした会社であれば,源泉徴収しているはずであり,その金額に基づいて夫には毎年住民税が課税されているはずであるので,一度調べてみてはいかがでしょうか。

Q 養育費の取り決めをした後,元夫の収入が大幅に変わったら支払い金額は変わるのでしょうか?
⇒元夫の収入が多くなった場合には元妻から増額請求ができる可能性があります。元夫の収入が少なくなった場合には元夫から元妻に対して減額請求される可能性があります。いずれにしても,当事者が変更を求めない限り,自動的には金額は変わりません。

<財産分与に関すること>
Q 私の給料の方が多い場合,財産分与や年金分割はしないほうがいいでしょうか?財産分与や年金分割をしないという方法はありますか?
⇒財産分与や年金分割は相手方から請求されることがあるので,請求はしないほうがいいとは思いますが,請求される可能性はあると思います。夫から請求されないのであれば,財産分与や年金分割なく離婚される方もいらっしゃいます。

Q 夫が浪費家で自分の趣味等に使っていた一方,妻が堅実に貯めていた場合でも,妻が貯めた預貯金は半分請求されるのでしょうか?
⇒基本的にはそうです。

Q 財産分与として,夫名義の住宅を娘名義にすることは可能ですか?
⇒夫と娘が同意すれば可能です。ただし,娘には贈与税がかかる可能性があるので十分注意された方がいいと思います。

Q 夫婦共有名義の財産を売却した売却益を妻だけが取得することは可能ですか?夫には借金があるので,養育費は期待できないので,財産分与でもらいたいと思っています。
⇒特段の事情がない限り,難しいと思います。夫に借金があっても養育費の請求は可能であるので,借金があるから養育費が期待できないとか,財産分与で先にもらう必要があるという主張は難しいと考えます。

Q 夫から生活費をもらえないまま別居しており,私の預金が100万円あります。これは財産分与の対象になりますか?
⇒別居後の財産は基本的には財産分与の対象とはなりません。財産分与は,別居時の財産を基準にして計算されることが大半です。

<年金分割について>
Q 年金分割について聞きたいです。
⇒年金事務所に行って,年金分割のための情報通知書を取り寄せてもらう必要があります。

<不貞など>
Q 浮気の証拠をつかむために,夫のスマホを勝手に見ると後で訴えられないでしょうか?
⇒可能性の問題なのであれば,訴えられることはないとはいえないです。

Q 夫の財産がわからないので調べて欲しいのですが,弁護士会照会(23条照会)で調べてもらうことはできますか?その場合の費用はいくらになりますか?
⇒受任前に23条照会をつかって夫の財産を調べることはできません。離婚の場合の財産調査だけの依頼は受けられません。23条照会の費用については,受任後,必要に応じて説明します。


9月27日分

2020年10月11日更新

<離婚自体>
Q 単身赴任の場合,別居といえますか?
⇒単身赴任をしている場合,ただちに別居しているとはいえません。ただ,夫が離婚したいと思っている場合,すでに別居していると主張されることがあります。

Q 夫が単身赴任で,夫が離婚を希望しています。連絡してくるなと言われているので連絡をしていないですが,このまま5年ほど過ぎて夫から離婚請求されたら,離婚せざるをえないのでしょうか?
⇒連絡してくるなと言われているからと言って連絡しないのは問題かもしれません。妻が離婚したくないと思ったのであれば,夫が有責配偶者ではないかと疑う事情があれば,それについて証拠収集をするべきでしょう(場合によっては調査会社に頼むなど。)。このまま何もしないでおくと,夫が有責配偶者であることの証明もできそうにないので,夫からの離婚請求が認められてしまうこともあるかもしれません。

Q 私の実家が遠方なので,子供を連れて離婚するとなると,私立高校に通う子供が学校を辞めなくてはいけなくなってしまうので,離婚を迷っています。どうしたらいいですか?
⇒セミナーでもお話しさせていただきましたが,離婚はいろいろなことを同時に考えて,最終的には,総合的に判断して決断していただく必要があります。迷った場合には,第三者である弁護士に相談することをおすすめします。

<慰謝料>
Q 夫は転勤族なので,妻の私が帯同し,転職も繰り返しました。子供はいません。このような私が転職をしてきたことなどに対して,慰謝料というのは発生しないのでしょうか?
⇒慰謝料というのは,違法行為に対しての精神的苦痛を金銭賠償するものであるので,転勤についていったということについては,慰謝料は発生しないと考えられます。

<面会交流>
Q 現在有責配偶者にあたる夫と別居中です。夫から面会交流の申し入れがない場合にでも,こちらから会わせるようにしないといけないのでしょうか?
⇒子供のために会って欲しいと思えば連絡すればいいと思いますが,そうでない場合には,申し入れがない以上,面会交流を積極的に実施するように働きかけをする必要はないと考えます。

Q 面会交流を決めた後,子への虐待(例えば子の面前で私を怒鳴るなど)があれば,面会交流をやめることはできますか?
⇒面会交流の合意をどのような形でしたのか(協議書か調停か)などにもよるので,具体的には弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

<財産分与>
Q 夫が結婚前に住宅ローンを組んだ夫名義の不動産があります。結婚後にローンの借り換えなどをした場合,共有財産となるのでしょうか?
⇒2人の共有財産からローンを支払っていたのかどうかによりますが,一部は共有財産と考えることができると思います。

Q 夫の借入金の連帯保証人になっていた場合,夫が将来的に払えなくなったら請求がくることがありますか?
⇒夫(主債務者)が支払えなくなった場合には,金融機関から連帯保証人である妻に請求がきます。

Q 夫の借入金の連帯保証人になっている場合,離婚時に連帯保証人からはずしてもらうことはできますか?
⇒債権者である金融機関に一度問い合わせをされた方がいいと思います。

Q 子供のお年玉や児童手当を貯めていた口座があるのですが,子供名義になっています。子供名義の預金は財産分与の対象となるのでしょうか?
⇒子供がお年玉を貯めていたものは子供のものと認められると思われますが,児童手当やその他,親がもらったものは,共有財産となる可能性があります。

Q 自分名義の預貯金を財産分与として夫から請求されないようにする方法はありますか?
⇒夫からの請求されないようにする方法はありません。

<養育費>
Q 養育費が決まった後,増額を求めることはできますか?
⇒養育費が決まった後,その算定の基礎となる事情に変更があった場合には,増額が認められることがあります。